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事業場内の会議室において研修会が開催された後に、事業場付近の料理店に場所を移して行われた懇親会に出席して帰宅する途中に被災した事例 |
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事業場構内の事業場が管理している私道において、帰宅途中の労働者が運転していた自動二輪車が転倒し被災した事例 |
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営業社員が最終の得意先から直接自宅へ帰る途中で交通事故により負傷した事例 |
事例1 事業場内の会議室において研修会が開催された後に、事業場付近の料理店に場所を移して行われた 懇親会に出席して帰宅する途中に被災した事例 |
@ 被災の発生状況
災害労働者は事業場内の会議室で開催された研修会に参加した後、事業場から徒歩で数分の距離にある料理店で行われた懇親会に参加し、約1時間30分後に料理店より自宅に向かって通常の通勤経路を帰宅途中、交通事故に合い負傷したものです。
A 認定のポイント
研修会終了後に、事業場内の会議室から料理店に場所を移し、懇親会に参加して飲食した行為が「業務」に該当するかどうか、換言すると当該料理店が「就業の場所」に該当するかどうかがポイントとなります。
なお、実際の事例においては、懇親会へ参加した行為が「通勤行為の逸脱又は中断」に該当するかどうか、及び逸脱又は中断に該当するとされた場合には、懇親会への参加が「日用品の購入その他これに準ずる日常生活上必要な行為をやむを得ない事由によって行うための最小限度のもの」に当たるかどうかといった観点からも検討される必要があります。
B 結論及び理由
通勤災害とは 認められません。
事業場内の会議室で行われた研修会への出席は当然「業務」に当たりますので、研修会終了後に事業場からそのまま帰路についた場合には、「就業の場所」と「住居」との間で被災したことになり、通勤災害に該当することになります。
しかしながら、本件の場合には研修会終了後に場所を変え料理店で行われた懇親会に出席し、飲食した後で帰路についたものであり、しかも懇親会に出席していた時間は約1時間30分にも及んでいます。懇親会は研修会そのものではなく、また業務上出席を義務づけられているものでもありませんので「業務」には該当せず、そのため懇親会が開催された料理店を「就業の場所」と認めることはできません。
なお、研修会や会議等が開催された後に、その場で引き続き行われるごく簡単な懇親会へ出席したような場合には、その場の状況等によっては「業務」の延長と認められる場合もありますので、懇親会に出席した場合には全て通勤災害に該当しなくなる訳ではありません。
@ 災害の発生状況
被災労働者は仕事を終えて帰宅する途中、一般公道にでる前の事業場が管理している私道上において、通勤に用いていた自動二輪車の前輪をわだちにとられ転倒し被災したものです。
A 認定のポイント
被災労働者が負傷した私道が「就業の場所」に該当するのか、あるいは「就業の場所」と「住居」との間に該当するのかどうかがポイントになります。
B 結論及び理由
通勤災害としては 認められません。
但し、 業務災害として取扱われることになります。
被災労働者が負傷した私道は、事業場の構内で事業運営のために専ら用いられている場所であり、通常部外者が立ち入ることはない場所です。そのため本件災害は被災労働者が事業主の支配管理下にいる間に発生したものと判断されたため、通勤災害に該当しないとされたものです。すなわち被災労働者が被災した場所は「就業の場所」と「住居」との間ではなく、まだ「就業の場所」にいる間であると判断されたことになります。本件の場合における「就業の場所」と通勤経路との境界は、一般公道と事業主が管理している私道との境になります。
なお、被災労働者の退勤行為が事業場施設内における業務に接続して行われ、また当該災害の発生にあたって、被災労働者の積極的な私的行為や恣意的行為が認められず、更にわだちに前輪をとられて自動二輪車が転倒するといった災害は通常発生し得る災害であると認められるため、業務災害として取扱われることになるものです。
@ 災害の発生状況
営業社員が自分の担当する得意先に対して営業活動を行い、最後に訪問した得意先から直接自宅へ帰ろうとして、最寄りの駅から自宅へ徒歩で向かっていたところ、対向して走行してきた乗用車にはねられ負傷したものです。
A 認定のポイント
被災労働者が最後に訪問した得意先が「就業の場所」として認められるかどうかがポイントとなります。
B 結論及び理由
通勤災害として 認められます。
通勤災害として認められるのは、「就業の場所」と住居との間において災害が発生した場合です。
本件の場合には、営業社員として外勤業務に従事する労働者であるところから、直行直帰という就業形態をとる場合には、最初に訪問した得意先が業務開始の場所となり、最後に訪問した得意先が業務終了の場所となります。
したがって最後の得意先から事業場に戻らず直接帰宅する場合には、最後の得意先から自宅までの間が通勤行為にあたることになります。
なお、いったん事業場に戻りその後帰宅するような場合には、最後の得意先から事業場までの間は業務中であり、その間に被災した場合には業務災害として取扱われることになります。